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(「そういう男」かもしれないと、私だってうっすらわかっていたのに。奥さんに忠告することもなく結婚を祝福してしまった……。私のしたことは、良かったのかな)
後悔が、胸の中でどす黒くうずまく。
三木沢の姿が見えなくなったところで、柿崎が低い声で言った。
「あれ、常習犯だと思います。やり返してもいいと思います。とはいえ、同じ職場なら逆恨みも、なあ……。痴話げんかがもつれたわけでもないのに、刺されるのは割に合わないというか」
言いながら、柿崎はジャケットの胸ポケットからペンの形をしたレコーダーを取り出して差し出してきた。
「録音したのは本当です。何かのためにデータいります?」
言葉遣いが、三木沢と対峙していたときより、やわらかい。
それだけで、安心して膝から崩れそうだったが、今はそんな場合ではない。
「あああの、ありがとうございます。助かりました。あの、自分でも、もっとうまくやれば良かったと思うんだけど、どうすればいいかよくわからなくて。もっとこう、うま~くあしらえないもんかなって……」
早口に言って、へらっと笑って見上げてはみたものの、柿崎はまったく笑っていなかった。
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