戦場の酷い掃除屋

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 要衝制圧。これが第一師団に課せられた使命でした。その目的地点に辿り着くには川幅最長600メートルの大河を超え、2000メートル級の山々を超え、占めて470キロメートルを踏破しなければなりません。しかし、この一帯は熱帯モンスーン気候により世界で最も雨が降る多雨地帯ですから雨期に入ると、行く手が泥濘になり行軍がままならなくなります。よって雨期に入る前に作戦を遂行しなければなりません。そこで無駄口司令官はタイムリミットを3週間と定め、作戦を決行しました。  ところが作戦開始前に無駄口司令官の指示で荷物の運搬や食用の為に民家から徴発して集めておいた牛たちは、半数が渡河の間に流されました。兵隊が乗船し、甲板の両端に並び、牛の手綱を持って牛のけつを引っぱたきながら船が進水するに従って牛を川に入れて行くのですが、前に行くしかない牛は引っ張られるまま泳ぐ内に潜ってしまいますので牛を押さえている兵士は自分も流されてしまうと危ぶんで手綱を放すと、牛は荷物を積んだまま流されます。仮令、向こう岸に辿り着いても牛たちは険しい山道で次々と倒れ、或いは足を踏み外して崖から転落してしまいます。ですから作戦開始してから1週間目でほとんどの牛が脱落しました。  一方、兵士たちは作戦が3週間で完了するよう計画されていたので第一師団の兵士のほとんどが3週間もつ最低限の食糧を一人当たり40キログラムに分け、他にも弾薬を背負って運搬します。彼ら以外の兵士たちもトラックや大砲を解体して運搬している訳ですから倒れた牛の荷物を運ぶ余裕はありません。進む足は当然鈍り、心も体も疲弊しますので作戦開始から3週間目に第一師団が辿り着いたのは目標地点から遅れること約100キロメートル離れた、小さな村でした。その時点で食糧が尽きましたので、そこで強引に食糧を徴発しましたが、人口希薄故、一個師団分の食糧を賄えるものではありません。
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