志麻さんと血みどろの骸骨3

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 こんばんは、幽霊です。  幽霊といっても死んだ人ではありません。  そもそも、物の怪だの心霊現象だのと呼ばれる現象の殆どは、想像力豊かすぎる人々の恐怖の投影。一部の例外はありますけれど、人の心が作り出す産物。  なので僕は死人ではなく幽霊で、血みどろの骸骨です。  このお話はそんな僕と、同居する志麻さんという大変奇特なお嬢さんとの、ちょっと変わった物語。 「ねぇ、幽霊。あなた変装はできる?」 「変装ですか?できません。この姿自体が設定ですし、何かを持つ力は僕には無いので、マスク一つ付けられません」 「そっかぁ。変装は無理かぁ」 「志麻さん突然どうしたんですか?クリスマスのサンタクロースの仮装のお話でしょうか」  僕は理由が分からずに、そう尋ねたのです。 「あのね、だいぶ前になるけど、幼馴染のお姉さんに会いに行こうって言ったの覚えてる?」  なんだか申し訳なさそうな顔で聞いてくる志麻さんと、確かにそんな話をしたのは秋の半ば。 「ええ、覚えていますよ。あれは志麻さんと朝から、会話ができるようになった最初の日でした」  この夏カップルの肝試しで創り出された僕なので、夜に出没する設定の幽霊として、日中は霊感のある人からもあまり見えない、影も実態も薄い存在でした。  そんな僕が霊力の補強を受けた事で、僕と波長の合う志麻さんと、朝から会話できるように成った初めての日。  僕としては記念すべき日を忘れたり、志麻さんとの会話を疎かにしたことは無いと、そう伝えたかっただけなんです。  それなのに何故か泣きそうな顔で上目遣いに見上げる志麻さんに、僕は返事を間違えたことに気付き慌てます。 「大丈夫ですよ。いつ会いに行くかとは決めていませんでしたよね。志麻さんがお忙しくて日曜日しか休めなかった事とか、その日曜日に一週間分の家事と買い物に、追われていたことも見ていましたから」  私の手は志麻さんに触ることができないけれど、どうしても頭を撫でてさしあげたくて、骨だけの掌を髪に乗せるフリだけしましす。  まだ涙目の志麻さんは恥ずかしそうに唇を尖らせてから、にこりと微笑んでくれたので、僕も一安心するんです。 「遅くなってごめんなさい。忘れてた訳じゃないのよ」 「はい、解っていますよ」 「あのね、次の日曜日、会いに行きたいなぁって思ったの」 「わかりました、日曜日ですね。ですがそれと変装には、何か関係があるのでしょうか?」 「前に出掛けたとき幽霊は、私から離れて浮遊霊のフリをしたんでしょ?次の日曜日は二人で並んで歩けないかなぁって思ったの」
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