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「じぃちゃん何しちゅぅが??」
雲一つないお天気の日に久しぶりに起きて部屋をごそごそしていたら孫の雪菜が音を聞き付けたのか部屋に入ってきた。
「今日はえらい頭がすっきりしとぉでな、だんじきしよるとね」
「だんじきやのぉて断捨離や、だ・ん・しゃ・り!断食はご飯食べんちゅぅ事な」
ボケた頭に雪菜の鋭いツッコミがくるが、なんも刺さらん。とにかく片付けをしたい気分だった。
「なんで急に断捨離なん?」
わしがモクモクと作業をしていたら壁に凭れながら雪菜が聞いてきた。 その姿に幼き頃の祖母に尋ねた自分の姿が重なった。
「最近はもうボケてしまいよるけぇな、頭がすっきりしちゅぅ時にやっときたいんや」
動かす手は止めずに口だけ動かす、それが出来たら良いが、老いた身体にはちょっと厳しくて、よっこらしょっとベッドに腰を下ろし菓子だったかなんやったかが入っていた缶箱を膝に置くと雪菜が興味深げに覗いてきた。
「じいちゃん、なんねその缶」
「これか?……これはじいちゃんの宝物入れや」
んっこら、とほんの少し力を入れ蓋を開けるとビー玉やら昔のお札やらが写真が無造作にガサゴトと音を立て日の目を浴びた。
その一番上には汚くくたびれた碧色の小さなニット帽があった。
「うわ、なんちゃね?その帽子、ばばちぃで?」
ニット帽を見た雪菜の顔が少しひきつったのが何だかおかしくて笑ってしまった。
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