10章 ハジメテと眼鏡と記憶と

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「ありがとうございます⋯⋯!」 キッチンにいた永斗さんの後ろ姿に、反射的に抱きついていた。 「⋯⋯来美?!」 食洗機に食器を入れていた彼は、驚いて肩越しに振り返る。 突然でおかしいと思われるかもしれないけど、言葉に出来ない想いがこみ上げて、こうせずにはいられなかった。 「⋯⋯もう⋯⋯逃げません⋯⋯」 腕にギュッと力を込めて背中に頭をくっつけると、素直な想いがこぼれ落ちた。 感じるのは、彼の優しい香りと温かさ。 私がクヨクヨしている間も、永斗さんはいつもみたいにしっかりと私のことを考えてくれていたんだ。 その真っ直ぐな想いに胸が震える。
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