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竜太も同じ気持ちだ。
裏・夢想を扱う者として、それは信じ難い。
あの葛藤を毎回続けることがどれだけ疲弊するか。
少しでも気を緩めれば、裏・夢想に飲まれるのだ。
他者がそれをコントロールすることなど、可能なのか?
「・・・確かに、試合前のアドバイスで選手達を裏・夢想状態にすることは可能かもしれません。ですが、立ちの最中に"飲まれれば"、修正できませんよ。」
雹矢がそう指摘をすると、ノブは頷いた。
「そうだな。しかし、結城さんがそれに気づいていないハズはない。何らかの手を打っているのだろう。」
ノブもその点については確信を持てていないようだ。
しかし、現実に黒田中央はあの武王塚を上回る成績で予選を突破している。
結果は可能であることを示していた。
押し黙る竜太と雹矢を見て、ノブはふっと笑う。
「まあ、とはいえ、お前らは俺の自慢の弟子達だからな。必ず、結城さんを倒してくれると信じてる。」
ノブが二人の肩に手を置いた。
「何で俺がお前らに天下雷命のことを教えたのかわかるな?」
雹矢が力強く頷く。
「逆境こそ、裏・夢想の力になるからですね。」
竜太が不敵な笑みを浮かべる。
「あの先生の鼻を明かしてやりますよ。」
緊張、不安、苛立ち、恐れ、おおよそ試合をするのに不必要だと思われる負の感情こそ、裏・夢想の原動力となるのだ。
「勝って全国へ行け!そのためにお前達は部に戻ったんだからな!」
ノブの言葉に、竜太と雹矢は腹の底から声を出して応えた。
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