1 旅立ちを前に

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1 旅立ちを前に

子育ては、振り返るとあっという間だと、つくづく思う。 結婚3年目に息子の優喜を授かって、日々変わっていくかのような幼少期から、 行事や進学などに当人以上に張り切ったり、反省したり、ドキドキしていた 学生期。 その間、優喜は大きな反抗期もなく、私たちは仲良し家族のまま彼の成長する時を共に過ごしてきた。 そして、そんな優喜が生まれてからの子育ての間、大きな変化を見せたのは 息子よりも夫の冠くんだったと思う。 どうやら世間一般として、女親は息子に甘くなる傾向があるらしい。 そのご多分に漏れず、私も、気付くとついつい優喜には甘くなりがちだった ことは自覚している。 しかし冠くんは、いくつになっても甘々な夫の顔とは裏腹に、息子には将来的に 自立を促すような、理論的で筋の通った父親の顔で接していた。 だから、小さい頃から叱る時にも声を荒げる代わりに、何が、どうして悪いのかを 優喜が納得するまで年齢に合わせて説明し、反省と結論に導いていた。 同時に、息子の成長と共に、生活面から経済面まで自分で出来る事を増やすように 促していたと思う。 だから、優喜が5歳になる頃から歌を歌いながら洗濯物を一緒に畳むようになり、 小学校に上がった頃から恒例になっていた親子キャンプを機会に、少しずつ優喜に 料理を教え、楽しんで憶えるようにしていっていた。
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