1 旅立ちを前に

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それと時を同じくして、毎月のお小遣いやお年玉の管理は息子当人に任せるよう にし、高校に入ってからの春休みはアルバイトをすることを勧めて、 お金という物自体を覚えさせていたように思う。 そのため、つい何かにつけて息子に手を貸そうとする私を、そっと止めてきた事も 一度や二度ではなかった。 そしてそんな時には、必ずというほど冠くんが口にした事がある。 優喜の人生は、彼だけのものだから。 息子が、人生という大海原を自分自身で楽しんで進めるようにしてあげたい。 それが、彼の子育て理論だったと思う。 お陰で優喜は、中学を出る頃には私達が忙しい時などは、家事全般を任せられる ほどになっていたし、何より冠くんは、息子に多くを与えるよりも、息子自身が 自分としっかり向き合い、自分の人生を考え、選び、決めて進むことを大事に した。 だから優喜は、子供の頃から自分のやりたい事、進みたい方向を自分で考え、 自分で決めて育った。 そしてそのせいか、本当は甘えん坊の父親とは異なり、良く言えば常に冷静、 だが実は、どこか冷めた男っぽい人間に成長したと思う。
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