馬と虎の叛逆

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「ぐぁ...ッ、...!」 突然与えられる痛みに、大河は思わず目を見開く。 久我よりも重いその一撃は大河の腹部を圧迫し、むせ返るようにして体は仰け反った。 「はあ、何だっていうんだよこのカオスな状況。頭のおかしい優等生と、意識が朦朧としてるイケメン、血だらけの不良。最高におもしれぇな」 異様な空間の中、結城は余韻に浸るかのように笑みを浮かべ、その姿はまるでこの状況を楽しんでいるかのようだった。 しかしそんな結城に久我は背後から蹴りをかまし、衝撃を受けた体は若干よろめく。 「いってぇな」 「大河に手出していいのは俺だけなんだよ。大河の体に俺以外がつけた傷が残るとか、考えただけでも虫唾が走る。大河は俺だけのものだ。お前には関係ない、俺だけの...」 久我はぶつぶつとまた訳の分からないことを呟き出して、その様子に面食らっていた結城にまた殴りかかろうとする。 「...っと、血の気が多いな。お前狂ってんじゃん、こえーよ。...俺別に痛いの好きなわけじゃないからそろそろ退散するわ。クガくん?すげー面倒くさそうだし」 「...てめぇ逃げんのかよ」 「ああ逃げるよ。俺はお前みたいな頭のおかしい人間を引っ掻き回して傍観するのが好きなだけだから。...とら、また今度ツラ貸せよ」 結城は何事もなかったかのように颯爽とその場から姿を消し、遠ざかる足音が聞こえる中、静かになった空間には異様な雰囲気だけが残った。
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