126人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
* * *
聖志と一緒に朝ごはんを食べて。
今は。
家まで送ってもらうため聖志の車に乗っている。
窓から見える景色。
眺めながら思っていることがあった。
亜南くんのこと。
少しでも早く。
亜南くんに伝えなければいけない。
私と聖志のこと。
亜南くんのことを待たせておいて。
こういう答えになってしまったこと。
本当に申し訳ないと思っている。
今日、仕事が終わったら伝えよう。
「遥稀」
そう思っていると。
聖志が私の名前を呼んだ。
「遥稀の仕事が終わる少し前に
遥稀がやっているカフェに行く」
「……?」
「俺も政輝くんに伝えないと」
私が思っている。
そのことが聖志に伝わった……?
「……伝えるって……
……私と聖志のこと……?」
訊きづらかったけれど。
聖志にそう訊いてみた。
「そう」
やっぱり。
聖志が亜南くんに伝えようとしているのは、私と聖志のこと。
「そうじゃないと政輝くんに誠意がなさ過ぎるから」
そうだった。
詳しいことはわからないけれど。
聖志は亜南くんと話をしたんだっけ。
そのときに聖志は亜南くんの気持ちを知った。
だから私と聖志のことをきちんと亜南くんに伝えなければと思ったのだろう。
「だけど私と聖志が一緒に亜南くんに会うのは……」
あまりにも酷なのでは……。
「確かに、そうかもしれない。
政輝くんに伝えるのは明日以降にするよ」
「うん。
私は今日、仕事が終わってから伝える、よ」
「わかった」
ちゃんと。
できるだろうか。
亜南くんに。
伝えることが。
最初のコメントを投稿しよう!