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私と彼
私こと、佐伯和奏(さえきわかな)と中河陽介(なかがわようすけ)は、3歳からのお隣同士。いわゆる幼馴染。
お互いの両親が共働きだったというのもあって、保育園からずっと一緒。
ちなみに、高校は少しだけ学力の差があって、陽介の入れる高校へ私が志望した。先生が泣きながら「佐伯ならワンランク上の学校が」とか言っていたけど丁重にお断りした。先生は両親にも「説得を!」と言ったけど、両親は私が希望するところなら、と反対もしなかった。きっと知っていたんだと思う。
私が陽介を好きな事を。
そう、私は陽介が好き。
だけど、陽介は知らない。
仕方ないのだ。私がそういう態度を取ってないから。
長く一緒に居すぎたんだと思う。素直に自分の気持ちを私は出せなかった。
なので、未だに陽介は私の気持ちを知らない。
そうしてしまった事で、大失態を取る。
陽介にハツカノが出来た。
それを知ったのは、なんと陽介本人が私にワザワザ自慢したからだ。
余りの衝撃で声が出なかった。表情は固まったまま、視線はデレる陽介に釘付けとなっていた。
それから、物凄い勢いで手の指先と爪先が冷たくなった。真夏だというのに。
たぶん、表情は死んでたと思う。取繕えてる自信は無かった上に、陽介が物凄く変な顔をしていた。「お前、大丈夫か?」と声を掛けられて我に返り、何も用事がないのに「用事があるから」とその場を離れた。
何が起きているのか、解らなかった。
こんな季節に…夏だよ。
絶対、彼女とハメ外すでしょ?
いやこの場合、ハメ倒すが正解?
そんな思考に至って、嫌過ぎて頭をブンブンと振ったら、今度は頭を振り過ぎて頭が痛い。きっと暑いとこに居たから熱中症かな。
そんな訳ない。
こんなにも意識も思考も、ハッキリしている。
ざわつく心、恐ろしい速さで動く心臓、寒くもないのに震える身体。
ふと気付くと、頬が濡れていて。
自分が泣いている事に気付いて、速足でその場を去ったのだけど、ようやく歩く速度になって。
ボロボロと落ちる涙に、更に悲しくなって。
私は一体、どこで間違えたんだろう?
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