蓮の心、ジェイ知らず

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蓮の心、ジェイ知らず

   蓮が涙を抑えきれずにいる頃、ジェイはきょとんとした顔を抑えきれずにいた。 『To Jerome Shepherd』 『From Anna Shepherd』  しばらくじっと眺め、ジェイはポイとテーブルの上に置いた。 「読まないの? あなた宛てなのよ」 「だって。俺、英語分かんないし」 「読むのは大丈夫だって言ってなかった?」 「もう忘れちゃった。日本人なんだから使わない英語なんて忘れちゃうよ」 「そうなの?」  なんとなく晶子としては釈然としない。言っていることは分かるのだが、(アメリカ人とのハーフなのに)と思ってしまう。 「気にならないの?」 「気になるけど。蓮が帰ってきてから読んでもらう」 「下に行って呼んでくる?」  冷蔵庫を開けたジェイは途端に口を尖らせた。 「今はやだ。デザート食べるの見られちゃうから」  その顔が可笑しくて晶子は笑ってしまった。確かによく食べる。上に来てからおせんべをパリパリパリパリ食べていたから取り上げたのだが、それから1時間も経っていない。 「言いつけちゃうわよ」 「お母さん、そんなことしないよね?」  甘えるように問いかけてくるのが可愛い。自分の息子たちには感じなかった母性本能を擽られてしまう。 「しょうがないわねぇ。何を食べる気なの?」 「えっと」  冷蔵庫を真剣に覗き込んでいるのが可笑しくて堪らない。 「あるのはシュークリームと」 「だめよ」 「プリンと」 「だめ」 「……アイスクリーム」 「だめ。カロリーが高すぎるでしょ?」 「……なんならいいの!?」  そばに立って行って一緒に冷蔵庫を覗いた。 「これにしなさい。一番カロリーが少ないと思うわ」  フルーツも何も載っていないシンプルなゼリーだ。ちょっとがっかりした顔をしたが、ちゃんと我慢することにしたらしい。 「分かった。お母さん、ありがとう!」  
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