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罰ゲーム。
そんな事は知っている。
けれど今時そんな事するやついるのか。そういう気持ちで驚いた表情をしたのだと、どうか信じて欲しい。
◆
「俺、お前の事が好きなんだけど。」
酷く抑揚のない声で同性のクラスメイトに言われたのはお昼休みの事だった。
一瞬、本当に驚いてしまって、それからすぐにこんな人の多い場所で告白なんてするバカはそうそういないと気が付く。
クラスの暗いやつに告白するという内容なのだろう。
告白してそれで終了なのかも俺は知らない。
断る様子を見て楽しむのか、それとも何だろう。
どちらにせよ趣味が悪い。
少なくとも、ゲイである自分に対して告白する時点でものすごく悪趣味だろう。
誰にもその事実を言っていないので、単なる偶然だろうけど。
「申し訳――」
ないけど、という断りの言葉は最後まで伝えられなかった。
俺の言葉は告白してきた男、松尾に掌でふさがれる。
「なあ悪いんだけどさ。」
松尾が俺に顔を寄せる。
「一週間だけ、付き合ってよ。」
賭けてるんだよ俺、何とかお前と一週間恋人ごっこが続けられるって方に。
突き飛ばす様に松尾の手を払いのけると、松尾がこちらをみてニヤリと笑った。
それはもうとてもとても楽しそうに。
ぞくりとした。
別に俺がゲイだからといって、松尾に特別な感情を持っている訳ではない。
多分松尾は俺の事をゲイだとは知らない。
だから、単に面白い遊びにクラスの陰キャを付き合わせてるだけという表情なのだろう。
「無理。」
そう答えたつもりなのに「それじゃあ、これからよろしくね。」と手を握られた。
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