プロローグ

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プロローグ

 アーメットにプレートメイル。  中世の騎士の姿をした指揮官は、これから戦場となるであろう場所を見渡せる所に立っていた。  右手で左腕に着けたガントレットを触りながら、真っ直ぐに戦場を見つめていた。  右手はそのまま腰に帯びた幅広のロングソードのグリップにかけた。  右手の中指には大きな指輪が光っている。  封書を蝋で封をする際に使用するシグネットリングだ。  もうすぐ始まる戦闘を前に、そうすることで自分を落ちつかせようとしているのかもしれない。  側近が声を掛けてきた。  約束の時間だ。  ”颯人(はやと)”はもう準備出来ているはずだ。  指揮官はゆっくりと右手の掌を右目にかぶせるように顔に当てた。  「”颯人”、やってくれ」  指揮官はそう呟くと、掌で覆った右目の視界が鳥が飛び立つように急上昇する。  指揮官本人の体が上昇しているわけではない。  その証拠に左目で見える景色は何も変わっていない。  変わったのは掌で覆った右目の映像だけだ。  つまりそれぞれの目で別の景色を見ることになる。
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