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「首なしは無言で立ったまま、ある方向を指さしていた。もしやと思いそちらに足を運んでみると、今度は勢いよく大福が走り出したのです。もうそれしか信じるものがない我々は、大福のあとを追ってあの場所にたどり着いたんです」 「大福と、弥生さんが……?」  不思議に思っていた。菊池さんが普段住んでいるのとは違ったアパートに九条さんたちが時間もかからずにたどり着けたことが。だがようやく答えがわかった。  弥生さんと大福に、私は生かされたのか……。  付け加えるように九条さんが言った。 「それに菊池も言っていましたが、玄関の鍵は掛けたはずと。でも私たちが到着したとき鍵は開いていました。掛け忘れたと結論づけるのは簡単ですが、私はそれよりももっと不思議な力が関わっていたと考える方が納得がいきます」  ようやく事件の全容を知り、一つだけ長い息を吐いた。  全てを理解した。たった一人の頭の狂った男に振り回されただけの調査。嘘にまみれ、嘘を重ねたあの人は一体なぜあんなふうになったんだろう。
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