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間近で仰ぎ見ると、灯台は思ったよりも大きかった。普通の建物なら優に四、五階分の高さがある。どっしりと太い円筒形の塔の先を、強い風に吹き流された雲が通り過ぎていく。
ラルフは、栗色の髪の上に斜めに乗せた軍帽を片手で押さえた。
頭上を振り仰いでいた視線を目の高さに戻す。頑丈そうな木の扉には小窓が切ってあり、その下に古びたノッカーが取り付けられていた。金属の輪を握り、短い間隔で四回、打ち付ける。
ヴァイオリンの音がぴたりとやんだ。
流されていく雲が日を遮り、扉の上に落ちたラルフの影がさっとかき消される。
その扉が勢いよく内側に開いたと思うと、金色の光がラルフの胸元に飛び込んできた。
「ラルフ!」
細いがよく通る、澄んだ声だ。
「……え?」
ラルフは思い切り面食らった。
「……え?」
だが相手も、ラルフに抱きついて顔を見上げるなり、びくっと飛びのいた。
若い男だ。今年二十七になったラルフよりいくつか下だろうか。まだ二十代前半にも見える。
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