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Prologue
私は人を助けたかった。
怪我、病、それらに伴う苦痛から。
助ける方法はいくつもある。
医術はもちろん、心を支え励ますという意味なら、思想も、芸術も、そうだろう。
しかし、学んでも学んでも、足りない、と思った。
一つを専門とするのでは、満足できない。
私は、ありとあらゆる傷病を除けるようになりたいのだ。そうして、がむしゃらに走っていくうちに——
いつしか「魔法使い」というものになっていた。
指先ひとつで火を起こす、御伽噺の魔法使いだ。
それなのに、まだ足りない。
若さを保つ魔法、傷を癒す魔法、心を支え励ます魔法。
色々覚えたのに、足りない。
だから、私は研究を続けている。
どんなものでも治せる方法を。
魔法使いになれたのだ。
御伽噺にでてくるような、万能薬だって、きっと。
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