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 それならばこれはどうだと、持っていたトートバッグの中からとっておきのを取り出して、丈に見せる。 「──は? なんだこれ……」 「ふふん、晴海おじさんに全面的に協力していただいたの」 「晴海叔父さんにまで会って来たの?」  丈に見せた(それ)は、丈が撮り溜めたあの空の写真の中から私が好きな写真を何枚か選んで冊子に纏めたものだ。オリジナルの写真集のようなつくりになっている。 「今すごいのね、こういう写真を本にするサービスいろいろあって。でも今回のこれは晴海さんの知り合いの人が──」 「いやいやいやこの中身の写真どうした?」 「丈の部屋のクローゼットで見つけて。あ、ネガやデータはアトリエに保管されてたし」 「……ということは」 「大量の私の写真も見つけました」 「!!」  空の写真はいいとして、私の写真は見つけて欲しくなかったらしい。  耳まで赤くなり、文字通り頭を抱え悶えている。ハハハ、著作権無視。  丈の叔父、 斎木晴海氏は、とても有名なフォトグラファーだとはじめて知った。 世界に広く名を知られている程の。  丈のお父様から、丈が写真を好きになったきっかけをお聞きし、どうしても会ってみたくなり会いに行った。 『はじめまして、こんにちは』 『はいこんにちは。はじめまして……、ん? 何か、初めてお会いした感じがしませんね』 『なぜでしょう、私もです』  晴海さんは被写体としての私をずっと見続けてきたからだろうと言う。そして私の方は、丈が歳を重ねるとこんな感じになるのではないか、という親近感で。  なんか全体の造りと雰囲気が、似てる! 「丈がこっちにいる間は、私を撮る人が誰もいないだろうから撮ってあげるよ、って」 「は? 必要ないだろ。何言っちゃってんだあのおっさん色気付いて。だめ! 碧なんて勘違いされて脱がされるぞ、絶対ダメ!」 「あはは、どういう事? どんな勘違いよ」  仕事はとりあえず休暇をもらっている状態だから、丈と数日間過ごして話し合ったら、一先ず帰らなければならない。離れたくないけれど、でも焦ってもしょうがない。
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