惑わせる声

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「真白さんの理想の結婚相手ってどんな人ですか?」 「突然どうしたのっ?」 突然ふられた話に、シャンパンを吹きこぼしそうに なってしまう。 「この前、結婚願望はあるって言ってたから 気になって。」 瀬戸君の言う"この前"の話にドキッとした。 だって、それはあの衝撃的な心の声が聞こえてきた 日のことだから。 きっと何かの間違いだと思っているけど。 今日まですっかり忘れていたから、出来れば結婚に 関する話は避けたいけど、目の前でじっと見つめ られてしまってはどうしようもない。 「…優しい人かな。」 「どんな風に?」 一瞬戸惑ってしまった。 今までそんなに具体的に考えたことなんて なかったから。 「うーん…例えば私が酔っ払って絡んだり 道端で盛大にコケたり、寝起きに変な顔してたり してても笑って許してくれる人…かな。」 「はははっ。真白さん寝起きは変な顔をしてるん ですか?」 「分からないけど、私、朝が得意じゃないから きっと変な顔してると思うの。」 話を聞いた瀬戸君はクスクス笑っている。 でも私からしたらこれはけっこう真面目な話で 要はそういう飾ってない所も全て受け入れてくれる 人が居たらいいなってことなんだ。 ふっと笑いを止めた瀬戸君。 「真白さんの寝起きの顔、見てみたいな。」 サラッと口にされた台詞は何故か甘い響きを 持っていて、その視線を避けるようにまた シャンパンを手にした。
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