第三夜

5/5
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「え?」 「は自分の思うままに歩けばいいんだ」  水瀬……って。  何で苗字で呼ぶの?  漠然とした不安に眉を寄せていると、彼はまた柔らかな笑みを浮かべる。 「俺はずっと待ってるから」 「え、」 「水瀬が戻って来るのを、ずっと待ってる」 「っ、涼ちゃ」  どこからともなく、ざぁっと風が吹いた。目を開けていられない程の強い風だ。  白い砂を巻き上げて、私の髪をも揺るがした。恐る恐る瞼を持ち上げる。  え。  いつの間にか、私は一人きりになっていて、毎夜見ていた白い世界に立っていた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!