三度目の片想い

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矢萩は朝、家を出てJRの駅に向かう。会社が神田に あり、三十分くらい電車に乗らなければならない。 矢萩は興信所に勤めている。勤めたくて勤めている わけじゃない。 同居する親が、何でもいいから働けというし、家でゴロゴロ していたら何をされるか怖くなった。 不景気のうえに矢萩は学歴や資格もないから、いかがわしい 興信所くらいしか採用してもらえなかった。 入社して身元調査のやり方を教えてもらった。短い研修を終え さっそく調査を始めることになった。 デスクと呼ばれるグループ長から取材のやり方や報告書の 書きかたを教えてもらった。 矢萩もどうにか報告書が書けるようになった。 仕事は共同作業ではなかった。一人だったから、人間関係で 疲れることもなく、自由な気分を味わえた。それはいいけど 給料は安かった。
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