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矢萩は朝、家を出てJRの駅に向かう。会社が神田に
あり、三十分くらい電車に乗らなければならない。
矢萩は興信所に勤めている。勤めたくて勤めている
わけじゃない。
同居する親が、何でもいいから働けというし、家でゴロゴロ
していたら何をされるか怖くなった。
不景気のうえに矢萩は学歴や資格もないから、いかがわしい
興信所くらいしか採用してもらえなかった。
入社して身元調査のやり方を教えてもらった。短い研修を終え
さっそく調査を始めることになった。
デスクと呼ばれるグループ長から取材のやり方や報告書の
書きかたを教えてもらった。
矢萩もどうにか報告書が書けるようになった。
仕事は共同作業ではなかった。一人だったから、人間関係で
疲れることもなく、自由な気分を味わえた。それはいいけど
給料は安かった。
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