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重厚なドアを開けると、そこはまるで異世界のような空間で、神秘的な笑顔で佇む妖しく美しいマスターに、遼一は魅入られるように妙子と一緒に店内へと吸い込まれた。 「いらっしゃいませ。妙子さん、お待ちしてましたよ。やっとご主人を連れていらっしゃってくれた」 静かに流れるジャズ。 薄暗い中でスポットライトが当たる数々の美酒。 遼一一人では到底足を踏み入れるのに躊躇する場所に、妙子はなんの違和感もなく溶け込んでいて遼一は驚く。 「はじめまして。妙子がいつもお世話になっていると聞いて、今夜はお邪魔しました」 名前を呼び捨てにされて、妙子は嬉しくなって遼一を見る。 「いえ。元々は私が妙子さんに助けていただいた立場ですから。さあ、どうぞおかけください」 マスターの財布を拾った件もちゃんと遼一に話していた。 マスターは妙子と遼一の前にコースターを置くと、早速カクテルを作りはじめる。 「今宵は、私からお二人に、こちらをプレゼントさせていただきます」 マスターは出来上がったショートカクテルを、妙子と遼一の前に置いた。 「XYZ。『永遠にあなたのもの』と言うカクテル言葉があります。お二人のために、永遠に続く愛の魔法をかけましたからね。さあ、どうぞお召し上がりください」 にっこりと笑う、美しい笑顔のマスターに、妙子と遼一は照れて真っ赤になる。 マスターの魔法の効果は、もう妙子は実証済みである。今こうして、遼一と素敵な恋ができたのだから。 だから今夜の魔法も、きっと。 「いただきます」 「いただきます」 二人はグラスを持ち軽く重ねると、見つめ合ってXYZに口をつけた。 マスターは満足そうに、ずっと二人を眺めながら微笑んだ。
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