やさしい傷口を慈しむ

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「やっぱり菫ちゃんは、すごいよね」 どうしてただしく励ますことができるのだろう。 きらきらと打ちあがって、はかなく消えていく。 花火はうつくしいけれど、見ていると落ち着かない気分にさせられてしまう。夜空に浮かんだひかりは、きれいに水面に反射していた。 万華鏡みたいだと思う。過去にも思ったように、今日の私も同じことを思っていた。 やさしい指先は、ずっと私の手を握ってくれていた。 木戸は、私が傷つけられたことを、大げさに騒ぎ立てたり、無暗に言葉にして相手を追い詰めたりする人ではなかった。 愛するときは、あんなにもまっすぐに叫んでくれるのに、かなしいときはどうしてか、そっと隣に寄り添って、抱きしめてくれている。 魔法みたいな人だ。 「すみれちゃんにあやかってる全部に、ここに最高がいるって叫んでみたいよね」 「おおげさだなあ」 「そんなことないよ。もうここに愛がいるって、教えたくてたまんない。でも、教えたら大変なことになるから、俺は毎日我慢してるんだ」 だから、悲しまないでほしい。言葉に出されていないのに、慰められていることがわかってしまう。
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