夢の後先、続く夜明け

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 陽光は昨夜、自ら脱ぎ捨てた浴衣の帯を結ぶのもそこそこに羽織った。 そして、寝室の襖を音が出るほど勢いよく開け放った。 「柊‼」 「――陽光?どうした?」  陽光が見れば、柊は大広間の卓へと向かい座っていた。 下は多分、昨夜と同じ浴衣姿なのだろう。 今朝はその上に藍色の丹前を着込んでいる。 昨夜はどこに仕舞ってあったのか、手元にはノートPCが置かれていた。 「・・・・・・」  陽光は無言で卓へと歩み寄ると、柊の前へと両膝を付いた。 「何だ?怖い顔して」  柊は正座を崩し、陽光へと向き直る。 ことさら明るい口調で問う柊を陽光は真っ先に抱きしめた。 「夢かと思った――」 「陽光・・・・・・」 「昨日からのことが全部、夢かと思った‼」  柊の頭のてっぺんへと降り注がれる陽光の声は言葉は小さな叫びだった。 心の奥底から発せられる、文字通りに魂の叫びだ。 「・・・・・・」  今度は柊が黙る番だった。 真夜中にした後はそのまま眠ってしまっていた。 今朝、陽光よりも早く目覚めたのをいいことに柊は内風呂を使った。
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