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ほんとうに一瞬だけど、神様の声が聞こえた気がする。
ハナエの下腹部をさすった手のひらに、重低音を感じる。夏祭りの太鼓の音が体の奥に響くアレに似ている。
「産め」
たった二文字。
声なのか分からない音。それが頭の上から降ってきた。
さんざん家族に反対されていた。
父親がいないこどもがどんなに苦しむことになるのか。
きっとそんなに重いものじゃない。
あのひとたちは、ニュースの特番やドラマの見過ぎ。頭の中で、実体験みたいに妄想する。
この子は産む。
だって神様がたしかに言ったんだもの。
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