恋だとか 愛だとか

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恋だとか 愛だとか

「ごめん。俺、誰のことも好きにならないから」 ふーん。 へー。 そっかー。 わかってたけどー。 「ちょっとでも可能性ないの?」 「ごめん」 知ってるよ。 恋愛なんてしないって、いつも言ってるの聞いてたもん。 彼女なんていらない。一生独身でいるって宣言してるのも、何度も何度も聞いたもん。 もしかしたら、過去に嫌な思い出があるのかなーとか。 趣味とか自分の時間が充実してるから興味ないだけかなーとか。 理由は教えてくれなかったから、想像するしかできなかったけれど。 あたし、結構仲良いつもりだったんだよ。 ワンチャン、押せばなんとかなるんじゃないかなって思ってた。 めちゃくちゃアピールしまくってたから、絶対あたしの気持ちに気づいてるはずだし。 周りの友達だって協力してくれてたもん。 2人きりでは会ったことないけど、何人かで遊びに誘えばのってくれたし。 講義の空き時間なら、缶コーヒーとか飲みながら2人ででも過ごしてくれたし。 ちょっとぐらい、意識してもらえてるんじゃないかと自惚れてた。 「遊ぼうとか言ってたの、迷惑だった?」 「いや、全然」 「でも、あたしが里村(さとむら)のこと好きなの、ばれてたよね」 「いや、全く」 「それは、嘘だよ」 里村は、腕を組んで首を傾けながら、斜め下を向く。 くそぅ、カッコいいじゃないか! こんなときだというのに見惚れしまう。 こんなふうにして、何かを考えるのが里村の癖だった。 特別イケメンって感じの顔じゃないんだけど、この仕草はずるいんだよね。 意外と長い睫毛とか。 スッとした鼻とか。 伸ばされたほうの、浮き出た首の筋から鎖骨にかけてのラインとか。 なんか、もう、全部がカッコいい。
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