41.星の薫り

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 日が暮れ、駒ヶ岳が見えなくなった窓辺。でも今宵も春の朧月が湖面を優しく照らしている。 「西園寺君、ソムリエとしてお客様への接客とサーブをお願いします」 「かしこまりました、甲斐チーフ」  水芭蕉が咲いたらここを去ってしまうけれど、いまも皆のお師匠さん、甲斐チーフ。 「では十和田さん。最後の確認をお願いします」 「はい。西園寺チーフ」  美しくも冷たい目が、どことなく懐かしい新しい上司、シェフ・ソムリエの西園寺チーフ。  秀星の形見、フランス製の銀のワインテスターを指にひっかけ、葉子はスパークリングワインと、デザートワインの味を確認する。  銀のテスターに、窓辺からこぼれてくる夜灯りがほんのり反射する。  今夜も大沼の夜空に、北極星が瞬く。  小樽産、貴腐葡萄のデザートワイン。  ずっと前のあの人の薫りが蘇る。今日も葉子のそばにいる。 後日談2 トロワ・メートル(終) 約一ヶ月の連載、おつきあいありがとうございました✨ 続編3もできたらなあと考えています。また、いつか(*ˊᵕˋ*)੭ ੈ
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