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「そういえば。もう結構前になるけど、例のシオちゃんの誕生会してさ」
「……誕生会?」
「そう、四月の初め頃に。誕生会っていうか誕生日当日にビール飲んだわけ、初ビール。俺と美南さんと三人で。ちょうどほら、芳野君の奥さんが迎えに来た日だったと思う」
ああ。
『芳野さん。ええと私今日──、え、あ、
間違えた、何でもありません……』
あの日か。
なにか言いたそうで言わなかったあの日。
誕生日だったのか。
ちゃんと聞いていたら、おめでとうくらいは言えたのに。
「不味い言いながら飲んでたな」
「そうですか」
「今度会った時聞いてみて?」
それはいつだろう。
いつになりますかね。
「プールも、しばらく行けそうになくて」
「行く時間ないもんなぁ」
「ええ、でも、行きたいですね、プール」
「泳ぐとスッキリして、少しは顔色良くなるかもよ? 芳野君の健康のためにもね」
こんな時期に不謹慎かもしれないけれど、
行きたいよ、プール。
泳ぎに行きたい。
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