62人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
手が触れただけでキュンとしちゃうなんて。
葵は見かけによらず面食いだよね、と友人に言われたことを思い出す。
いきなり心のパーソナルスペースをぶち破り、相手を手のひらの上で転がすような言動をとる。それはきっと、冬音にはなんてことのないことで、そこにいちいちキュンとしていたら振り回されてしまう。
そう、キュンってしたのは気のせいよ。
心の生じた正直な感情を抑え込むようにして、葵は口を開いた。
「え、冬音っていくつなの?」
「今年二十一。浪人して大学入ったからさ、一個か二個の差なんてタメと同じだよ」
なるほど。たしかに二十三歳の葵とは確かに二歳差、冬音の感覚だと同い年なのだろう。
「へぇそうなんだ。通ってるのは、そこの?」
「そうそう、実家にいたときより通学が一時間くらい短くなるから最高」
そんなたわいもない話をしながら、葵と冬音は夕食の器を空にした。
最初のコメントを投稿しよう!