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 手が触れただけでキュンとしちゃうなんて。  葵は見かけによらず面食いだよね、と友人に言われたことを思い出す。  いきなり心のパーソナルスペースをぶち破り、相手を手のひらの上で転がすような言動をとる。それはきっと、冬音にはなんてことのないことで、そこにいちいちキュンとしていたら振り回されてしまう。  そう、キュンってしたのは気のせいよ。  心の生じた正直な感情を抑え込むようにして、葵は口を開いた。 「え、冬音っていくつなの?」 「今年二十一。浪人して大学入ったからさ、一個か二個の差なんてタメと同じだよ」  なるほど。たしかに二十三歳の葵とは確かに二歳差、冬音の感覚だと同い年なのだろう。 「へぇそうなんだ。通ってるのは、そこの?」 「そうそう、実家にいたときより通学が一時間くらい短くなるから最高」  そんなたわいもない話をしながら、葵と冬音は夕食の器を空にした。
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