時雨刻

広いお庭。
隅に植えてある紫陽花の上に、しとしとと冷たい雨が落ちています。

長い板敷きの縁側の、
少し湿り気を含んだ座布団の上に正座をし、お庭を眺めるわたくしには、梅雨の時期、古い和風建築の屋敷の中は、只だだっ広く、どこかうすら寒い感じがいたします。

わたくしは今、庭のある一点を見つめながら、困難な思索の中に沈んでおります。

いいえ、ご免なさい。
思索などという聞こえのよいものではありません。

むしろ、悔恨や絶望、恐怖といった類いの、負の感情でございましょう。

そう。
これは生涯、決して口にしないと誓った秘密_____

ですが、わたくしの中に留め続けるにはあまりに辛く重たく、恐ろしい。

ふとしたきっかけさえあれば、すぐにでも溢れ出しそうな。

ああ、皆様。
どうか、大いなる慈悲と寛容の心をもって、聞いてくださいますでしょうか。

浅はかで愚かなわたくしの、それはそれは恐ろしい経験を。

でも同時にそれは妖しくて、歪ながらに美しい物語でもあるのです。

さあ、始めましょう。
哀れな女の独白を。