悪戯な猫

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「あー今日も黒猫ちゃん可愛かったぁー」 『今日も抱っこさせてくれた?』  机の上に立てたタブレット端末には微笑んだ彼氏、成田史春(なりたふみはる)が映っている。涼しげな目元がかっこいい愛しい人。  寒くなってきたから水色の入院着に濃紺のカーディガンを羽織っているけど血色はいいようだ。 「させてくれたよ! ちょっと雨降ったから一緒に玄関先で雨宿りしたんだ。もう連れて帰りたいー! なんでペット不可なのこの部屋!」 『紗都香(さとか)、もうそれ何回同じこと言うの? もうすぐ代わりが完成するんだろ? どんな感じ?』  クスクス笑う史春に私はバッグから黒い塊を取り出して見せた。 「ジャーン! もう最終調整だけだから部屋でできるんだ。明日には完成させるからね! 待ってて史春」 『うっわ! 本物の黒猫にしか見えないな……動きにもこだわったんだろ?』 「そりゃあね! 本物と同じくらい可愛く動くように頑張ったんだけど……でもジャンプは無理なの」 『はは、流石にね。猫のジャンプを再現するより人間型を作る方が簡単そうだ』  ああもう史春の笑顔が可愛過ぎる!  あ、白い袖が映り込んだ。 『点滴終わりましたねー。…………はい、じゃあ引き続き彼女とごゆっくり』 『ありがとうございます』 「あ、看護師さん、居たんだ。もう、言ってよ恥ずかしいなぁ」 『ごめんごめん、紗都香との話、中断したくなくてさ』  ニコニコしてそう言われると私もニヤけるしかない。  史春は大学受験の直前に末梢神経の病気になった。寛解と再発を繰り返す先の見えない難病だ。なのに私がいるから幸せだよっていつも笑ってくれる彼が愛しい。高校に入ってすぐの付き合いたての頃から私を見てはふわふわと笑ってくれたけど。  私達はたわいもない話をして、病院の消灯時間になった。彼におやすみを言って通話を切ると、私は買ってきたお弁当を食べながらロボットの最終調整に夢中になった。
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