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「浅倉く、」
「時間なんか気にしないで」
「いやでも、」
「まだ離れたくない」
困ったように結衣の眉根が八の字になる。その表情すら可愛くて、愛しくて、手を握る力を強めてしまう。
結衣の瞳の中の水分量が強くなった。
「……浅倉君」
「ん?」
「ギュってして」
その気持ちを俺の指を強く握ることでより顕著に表す結衣。体の奥深くが揺さぶられて、返事をするよりも先に手が動いた。
ギュっと抱き締めると、それに応えるように結衣の細い腕が首に回る。
「……まだ帰らないで」
「帰んないよ」
「……明日、朝遅刻したらごめんね」
「治なら分かってくれるから」
髪を撫で、頬をなぞり、愛しい彼女の瞼にキスをすれば熱が溢れ出す。首筋を舐めて、鎖骨に甘噛みすると結衣は小さく鳴いた。
「ん、っう、……浅倉君、」
「……ん」
弱い力で髪を掴まれる。毛布の中に手を忍ばせると、さっきチラリとしか見えなかった柔らかな部分に触れた。グシャ、と髪がより乱される。
喉の奥から吐き出される息はすっかり熱くなっていた。
「好きだよ」
「…、あ……っ、」
彼女が違う男に触れられたこととか。彼女にはこれまで付き合ってきた男がいることとか。ひどいことを言って彼女を傷付けてしまったこととか。自分の不甲斐なさとか。
今更どうしようもないことも、気にしたらきりがないことも、受け入れなきゃいけないことも全部混ざって熱になって、結衣にぶつけるのは良くないことだけど。
今日の夜だけは許してほしいと思いながら、高まる感情をありったけ彼女に刻み込んだ。
-ナイトメア―
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