腰抜けの冷たい視線

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 いじめの原因究明をすればする程、学校側に過失と責任があることを立証するジレンマに陥る。だから学校はいじめの原因究明に本腰を入れないし、校長は矢面に立たされないよう、いじめがあると分かっていてもいじめを公表しない。教員も校長に口外しないよう言われているので保身の為、いじめを只管、隠蔽する。だから学校のアンケートで陰口を言われる、無視されるなどの質問に当てはまると回答しても、その生徒を支援するどころかアンケートの内容をも隠蔽する。仮令、第三者委員に選ばれた人間が学校側に都合のいい人間じゃなくて公平な判断が出来る人間でアンケートの内容を知って報告書に「要支援領域」と判定結果を記してもそれを他の教員たちと足並みをそろえて隠蔽する。  斯様な例に漏れない糞の卑劣漢の担任の支配下に置かれた芳樹君は堪ったもんじゃない。彼はいじめに遭っている被害者であり犠牲者なのだから。それなのに担任はお前は存在する価値がない!俺にとって邪魔なんだから消えてしまえ!と言わんばかりに芳樹君を冷たい目で見る。時にはお前は変わってるから異質だからいじめに遭って当然だ!と言わんばかりに芳樹君を冷視する。その目は悪魔宛らに冷酷だ。無慈悲だ。残忍だ。実際、いじめをして良い理由なんてないのに芳樹君を苛められてもしょうがない生徒と鑑定している。本来、生徒の亀鑑となり、博愛の精神を持ち、分け隔てなく生徒に接しなければならない立場であるのに拘らず差別する。何ということだ。言語道断だ。これではいじめを苦に自殺する生徒が現れても不思議じゃない。現に芳樹君の担任のような先生は珍しくなく全国津々浦々何処にでも存在しているからいじめを苦に自殺する生徒が跡を絶たないのだ。  この現状を踏まえ、芳樹君はこんな境遇では命が幾つあっても足りないけど死んで堪るか!と反骨精神を呼び起こし、勇気を振り絞って立ち上がった。三者面談の時に自分はいじめに遭っている!何とかしてくれ!と担任に訴えたのだ。今まで芳樹君はいじめられていることを恥ずかしいこととして親に話さないでいたから芳樹君の親は初めて我が子がいじめられていることを知って何とかしてくださいと息子と共に頼み込んだ。すると担任は親にばれちゃあしょうがないと芳樹君の為ではなく自分の為にいじめをなくそうと腰を上げた。と言ってもいじめっ子がリーダー的なクラスの空気を読んで言動するような有様だから自分では出来なくて不良生徒には鉄槌を下し折檻も辞さない鬼と生徒から恐れられている先生に頼んだ。それが芳樹君にとっては功を奏して芳樹君が担任にいじめのことを密告したとはいじめっ子に伝わらなかったからいじめっ子は芳樹君に矛先を向けることになく鬼先生に恐れをなした儘、いじめを止めた。そしていじめっ子に従って或いは同調して芳樹君をいじめていた生徒たちもいじめを止めた。しかし、芳樹君は相変わらず担任に冷やかな眼差しで見られる。決してあからさまに邪険に扱われるのではないが、それだけにいつも仮面を被る腰抜けめ!と時に心の中で担任を罵りながら反目するのだ。
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