【14】つながる

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翔太をチャージできた俺は、翌日から真面目に仕事に取り組んだ。 大阪でのイベント準備も、通常業務も順調に進んでいる。この調子なら金曜の夜には帰れそうだ。 今回のこの出張は正直苦痛でしかないと思っていたが、イベント立ち上げのいい経験になったし、骨折の件で周りに迷惑をかけてしまったからその贖罪だと思う事にした。 まぁ、もう当分いいけどな。 「二週間ありがとうございました」 「捺さん! 是非また一緒に仕事しましょうね! 関西支社みんな待ってますからねー!」 林がウザいくらい真剣な顔をして俺の腕をつかんでくる。もう来たくねぇわ。 「はは……そうですね。じゃぁ、失礼します」 「捺さーん! ありがとうございましたー!」 本社とはまた違ったクセのある連中だ。 めちゃくちゃ疲れたが、終わってみれば少し楽しかったのかもしれない。少し。 会社を出た俺は腕時計で時間を確認した。 うん、予定通りの新幹線に乗れそうだ。 さっき翔太に東京駅の到着時間は連絡したからあとはもう帰るだけだ。 「捺さーん!」 あれ? 「……翔太、か?」 新幹線の改札口でキョロキョロと探していたら、目の前の人に声をかけられて一瞬誰か分からなかった。 「お前、今日メガネなのか?」 「あぁ、はい。捺さんに言われたので、ダテメガネしてます」 マジか。 「どうですかこれ。効果ありますかね?」 翔太はメガネのフレームをくいっと上げて得意気な顔をしている。逆ナン防止のために咄嗟に提案したものだったが、覚えていてくれたなんて驚いた。 「いいな、似合ってるよ」 「へへ、やった」 俺がそう言ってやると、少し照れながら柔らかく笑った。 でも、効果はあまり期待出来ないかもしれない。 だってそのメガネ姿、最強に可愛いぞ。 どうやら俺には逆効果だったらしい。 俺は翔太の肩に頭を乗せた。 「な、な、捺さん!?」 耳元で動揺している声がする。 「ひ、人が、み、見て……」 あぁ。本当は今すぐ抱きしめたい。 でも、お楽しみはこれからたくさん── 俺はゆっくりと顔を上げた。 そこには動揺を隠せていない翔太の真っ赤な顔が待っていた。 「今日どうする? ここで何か食ってくか?」 「あ、えっと……な、なんでも、いいです」 「じゃぁ時間も遅いしもう帰るか。明日の準備もあるからな。ここで弁当か何か買っていこう」 「え、明日なにかあるんですか?」 翔太のキョトン顔に向かって、俺は言った。 「そ。明日は草津温泉に一泊旅行です」 「え。え? えぇっ!?」 いざ、草津へ──────!
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