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さらに行くと、いくつもの天幕が見えてきた。
「ここが避難場所みたいね」
青藍は双熹を振り向いた。
「そのようですね。――あちらで、炊き出しを行っているようです」
料理の香りがし、引き寄せられるように向かうと、椀を持って並ぶ人々の列があった。それを辿って行った先にいたのは、
「大麒!」
幾人かの衛士と一緒に、人々に料理を配る大麒の姿だった。
「やっと会えた……」
少し痩せて、身につけているものも汚れているが、元気そうだ。
青藍の目に涙が浮かぶ。駆け寄って、抱きしめたい。「あなたを探してここまで来たの」と告げたい。けれど、青藍は思いとどまった。
(今はその時じゃないわ)
青藍は足早に大麒の元へと向かうと、落ち着いた声で、
「大麒」
と名前を呼んだ。振り返った大麒が青藍の姿を見て、
「青藍?」
驚いた表情を浮かべた。
「どうしてここにいる!」
大きな声を上げた大麒に向かって、青藍は片手をあげると、
「質問は後。私も手伝うわ」
と言って、隣に立った。大麒が粥をよそった椀を手に取ると、待っている男性に渡す。
「気をつけて持って行ってね。次の方、どうぞ」
並んでいる女性から椀を受け取って、大麒に差し出す。手が止まっていた大麒は、気を取り直したように青藍から椀をもらうと、再び粥をよそい始めた。双熹はいつの間にか、青藍の馬と自分の馬を崩れた建物の中に入れ、人々の列の整理を始めている。
列は長く、粥が足りなくなりかけると、衛士が急いで次の鍋を持って来た。青藍は途中で調理の手助けに入り、全ての人々に食事が行き渡るまで、働き続けた。
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