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「君はこの世界が終わる時、何をしていたい?」
僕は真昼の湖に釣り糸を垂らしている彼女に尋ねる。
「おんなじだよ。いつもみたいに釣りしたり畑耕したり、ドラゴンに乗って散歩したりさ」
「それでいいの?」
「どうせ私たちにできることなんてないからね。それなら最後までこの世界を楽しむだけでしょ。いつも通りが一番幸せ」
桟橋の上に座った彼女はぴくりとも動かない釣り糸を見ながら言った。
「アヤトは何してたいの?」
波の立たない水面を見つめたままの彼女に僕は答える。
「僕もサクサと同じかな」
「なんだ一緒かよー」
――僕も、彼女も知っていた。
「ああ、あと追加で」
見上げれば澄み渡るような碧天。夜には瞬く満天の星。
湖は静かな鏡となってそれを映す。
大地はどこまでも青く広がり、その先には雄々しくも艶やかな山岳がそびえ立つ。
人の理想を形にしたようなこの美しい世界は。
「いつもみたいに君と喋ってたいな」
「ふふ、仕方ない。付き合ってやるか」
明日、終わりを迎える。
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