LIFE on LINE

7/10
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「もう、いいだろう。これだけ大勢サンプルがいるんだ。父と母、二人ぐらい……新しく俺が入る。だからせめて、両親は妹のところへ返してくれないか」 「できません」  セルパンは無慈悲ほどに冷たい声音で告げた。無感情、と言うべきだろうか。 「何故だ? 二人のデータなんて取り尽くしただろう?」 「データ如何ではなく、物理的な問題ですね。オフライン上ではお二人に対し、十分なケアが出来ないでしょう」 「何の話だ? ではせめて、ここで会わせてくれ。それならいいだろう」  セルパンはまた、しばし思考していた。答えが出たとおぼしきその顔は、不気味なことに先ほどと何も変わらない。 「いいでしょう。特別に許可します」  そう告げると、セルパンは踵を返し、颯爽と歩いて行ってしまった。  おそるおそる付いて行くと、見覚えのある部屋の前でピタリと止まった。データ管理室……俺が以前忍び込んだ部屋だ。  セルパンが入り口のパネルを操作すると、扉が開いた。  薄い壁一枚を隔てた室内は驚くほど寒い。そして真っ暗だった。  そんな中、灯りが一斉に点いた。ぼんやりとした灯りは天井から発せられるライトのものではない。部屋の壁一面に展開する大きな水槽のものだ。 よく見ると、小さな水槽がいくつも並んで壁を覆い尽くしているのだった。中にいるのは、魚ではない。もっと大きな塊のようなもの…… 「! これは……」 「ええ、脳です。ほんの一部ですが」  人の脳みそが、水中に浮かんでいた。  おびただしい数だ。これで一部だという。 「いったい、誰の……」  俺が尋ねると、セルパンはにこやかに告げた。 「EDENにお住いの方々ですよ」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!