王道どころじゃない!

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王道どころじゃない!

 私の名前は水原(みずはら)圭志(けいし)。  遥ヶ丘(はるかがおか)学園高等部の二学年で生徒会副会長をしています。どうぞよろしく。  ここ遥ヶ丘学園は少々特殊な場所で、通う生徒の大半が良家の子息や裕福な家の息子。一般家庭の生徒もいるけれど、圧倒的に数が少なく、その子たちはなんだか肩身が狭そうに生活している。  副会長としてどうにかならないかと思うのだがなかなか上手くいかず、変わらず差別的な空気が蔓延しているのが現状だ。  そしてこの学園が特殊だと思う一番の要因が、ゲイやバイが多いということ。  あ、ここ男子校なんです。しかも全寮制。お年頃の男の子が集まれば自然とそうなりますよね。しかたがないことです。  でもそれが暴力に変わるのはいただけない。  リンチやカツアゲ、恐喝なども勿論だが、レイプやセクハラが横行しているのは異常だと思う。  容姿、家柄、成績、すべてが揃っている生徒には親衛隊というファンクラブのようなものがつく。その筆頭が生徒会役員と風紀委員長と副委員長。その他見た目がいいものや、スポーツが得意で容姿がいいものたちにも親衛隊はいる。  そして親衛隊は親衛対象に近づく輩を許さない。  近づく者が親衛隊の存在を認識していて近づいた故意的なものならまだ分かるが、無意識、つまりそれが不慮の事故的なものでも彼ら親衛隊は過激に反応する。  親衛隊は親衛対象に近づいたものをレイプや恐喝などの手段を使い排除し、それらは『制裁』と言われ、一般生徒は彼らの『制裁』を恐れて誰も近寄らず、必然的に学園には犯罪が溢れ人気者は人気者としか仲良くできないということになってしまっていた。  それを窮屈に思うひとも多いんじゃないかな。  私にも親衛隊は存在するがあまり興味はない。  私の親衛隊はネコ三、タチ七の割合なので比較的満遍なく集まっているのだけれど、彼らは私のことを勘違いしているのでなかなか親しくなれないのだ。  勘違い、というのはその言葉どおり、彼らは私のことを誤解している。  それは私の容姿が関係しているのだろうと思う。  私は儚げな美人。らしい。  全体的に色素が薄く、顔のパーツもバランスよく配置されていて、睫毛は雪が積もるくらいに長い。身体つきも華奢なほうでまったく男らしくない姿だけれど、今の容姿に不満はない。  けれどそれによって起こる勘違いには辟易する。  私の親衛隊には、何故か私が清らかな存在に見えているらしい。  絶対にこの容姿のせいだろう。天使だとか妖精だとか、幼い頃からよく言われてきたが、彼らは私が清廉な存在だと頑なに信じている。どれだけ言葉を尽くしても伝わらない。まったく、困ったものです。  ひとり長々とモノローグに浸っていたけれど、そろそろ現実に戻らなければ。  遥ヶ丘学園にとっては非常に珍しく季節外れの転入生がやってくる。そして転入日は今日。  私は副会長として、彼をお出迎えしなければならないのだ。  コツコツ、と石畳を踏みながら前庭を抜ける。  空は快晴。今の時期は薔薇が盛りで空気まで甘い。こんな日に転入なんて運がいいなあ。  生垣の影でいちゃつく生徒たちを微笑ましく眺める。  うん。愛し合うのはいいことだ。盛り上がって止まらなくても若いのだからしかたがない。周囲に迷惑をかけない範囲であれば好きに盛ればいいと思う。  ところで誰か、私の穴、使いませんか?
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