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願いが叶う洞窟
「対価さえ支払えばどんな願いも叶うという洞窟がある」
そんな噂を意識不明の彼女が眠る病室で偶然耳にした。
どんな願いも叶うか……
まるで子供が作ったような大袈裟な噂だと思った。でも最初から全てを否定したくはなかった。
もし仮にそんな洞窟があるのなら……いま目の前で目を覚まさない彼女を救ってほしい……余命幾ばくもない彼女を……
彼女が不治の病だと聞かされたのは彼女に告白した時だった。
「もう長くはないの……だからね、私と一緒にいても未来はないよ」
月光のみが照らす砂浜で、僕にそう告げる彼女は悲しそうな表情を浮かべていた。
僕はそんな彼女を抱き寄せ、彼女が驚いている間に唇を強引に奪った。しばらく口付けを交わしてから困惑する彼女に次の言葉を告げた。
「未来がないなんて言うな。君と歩いていく先が僕にとっての未来だ。たとえこの先、どちらかが先に死んだとしても僕達の未来は続いていく。だから僕と一緒に未来を歩かないか?」
僕の言葉に彼女は何も言わなかった。ただ彼女の唇が僕の唇に飛び込んできた。それが彼女なりの精一杯の返答だったと思う。
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