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事の始まりは、たしか一か月前くらいだったと思う。
「この前、あの店にいたでしょ?」
友人のその言葉に頭を捻った。
そんな店は知らないし、行ったこともない。
それを告げると、友人は首を横に振る。
「いやいや、あれは絶対にあんただって。十年来の友人が見間違うと思う?」
それからも、私の目撃談が続いた。自分が仕事でその場所に居るはずもない時間。私は、自分にそっくりな誰かが居るんだろうな、くらいにしか思わなかった。
ところが、そいつはある日突然、私を訪ねて来た。
「えっ?」
私は一瞬鏡の前に立っているかのような錯覚を覚えた。
「びっくりした?」
そいつは悪戯っぽく笑った。
「ど、どちらさまですか?」
「あはは、どちらさまですかじゃないでしょ?」
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