互いを答えに歩こう

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引っ叩いたり、笑ったり、呆れたりしながら俺の心臓の片隅に存在している。 きっとたくさんの人間の心の片隅で、朝佳は呆れ笑いを浮かべているのだろう。覚えていることと、忘れられないことは違う。 「うん、そうだね。私たちも負けらんないなあ」 「勝ち負けかよ」 「リッキーは二番手キャラっぽいから頑張んないと」 「あー?」 園の子どもたちも来たのだろう。いくつかの手紙が乗せられていた。 朝佳はたくさんの人に囲まれる人間だった。 いつもまっすぐで曲がったことが嫌いで、弱いものを放っておけないようなかっこいい人間だった。今も俺の憧れのままだ。 「ずっと好きだった」 「うん」 仕方なく脇のほうに花束を寝かせてやる。 サナと一緒に座り込んで、いかにも高そうな線香が置かれていることにも笑った。一体どんなやつらが手を合わせに来ているのだろう。朝佳はこんなにも多くの人間に、死してなお、大切にされている。 「今も好きだ」 「えっ、私は?」 手を合わせ終えて呟いたら、横から軽快な声が飛んできた。見つめたら、サナがふざけた調子で笑っている。 今も好きだ。朝佳を大事に思っている。俺の心に生きている。 けれど、俺がこの世界で心底大事にして守って、全部をやりたいと思うのは、俺の隣で生きる馬鹿優しい女だった。
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