すれ違う日々

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「ジェダ。今日は仕事?」 「休み。でも、少し出掛けてくる」  食後に二杯目のコーヒーを飲みながら、皿を洗うジェダに声を掛ける。 「そっか……。私は部屋で執筆してるね」 「わかった。そうだ、これ返すね」  ジェダはタオルで手を拭くと、さっき外したエプロンのポケットから何かを取り出す。  テーブルの上に置かれたそれは、何かのデザインを象った指輪であった。 「あ〜! 失くしたと思ってた指輪!」 「掃除機をかけてたら見つけたんだ。コトに返そうと思っていたんだけど、なかなかタイミングが合わなくて……」  ジェダが返してくれたのは、とあるアニメキャラクターをイメージして作られた指輪であった。  キャラクターをイメージしたデザインが彫られた銀の指輪は、私のお気に入りアクセサリーであり、数ヶ月前に失くしたと思って落胆していた。 「見つけてくれたんだ。ありがとう」 「うん……どういたしまして」  感謝しただけなのに、何故かジェダは困った顔をした。  とりあえず、指輪を左手の薬指にはめると「あのさ」と話しかけられる。 「コトが落ち着く場所ってどこ?」 「落ち着く場所……? 自宅かな。こことか」  テーブルをトントンと指すと、ジェダは何か覚悟を決めたような顔をした。 「コミケの日。もし何も予定がなかったら、俺に時間をくれる?」 「うん。特に予定はないからいいけど……」  コミケの日は今週末。  今年はブース参加も、一般参加もする予定が無かったから、その日は特に何もなかった。 「どこか出掛けるの?」 「ううん。話しがあるだけだから、ここで大丈夫。……今のでわかったから」 「そう?」  そのまま、ジェダは部屋に戻ると、しばらくして「夕方には戻る」と言って、どこかに出掛けて行った。 「話しがあるって、何を言われるんだろう。やっぱり、ここを出たいとか? それに今のでわかったって何なんだと思う、小雪?」  振り返ると、テレビの前に真っ白な毛玉は無くなり、代わりに台所からガサガソと物音が聞こえてきた。 「小雪?」  台所を見に行くと、そこには戸棚に隠していた猫用おやつを取り出す白猫の姿があった。 「もう、小雪ダメだって!」  小雪が散らかした戸棚に仕舞っていた食材や猫用おやつを片付けている内に、さっきのジェダの言葉は頭からすっかり忘れられていたのだった。
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