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「疲れた顔しているけど、どうかした?」
「ちょっと使い方がよくわからなくて」
「だから、一緒に入るか聞いたのに」
「入りません!」
追い討ちをかけるように言われたあげく、笑われて、なおさら疲労感が増したのだった。
こんなことで壱都さんとうまく暮らしていけるのだろうか―――いつも一緒にいる樫村さんを心から尊敬したのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
お祖父さんが亡くなった後、私には悲しむ暇がなかった。
なぜなら、壱都さんは私が思う以上に非常識で一般の感覚とはかけ離れた感覚の持ち主だったからだ。
マンションに来た次の日、壱都さんが仕事に行っていなくなると、白河家のボディガードとして働く女の人がマンションの部屋に待機した。
パンツスーツ姿でキリッとした顔立ちをしている。
一切、隙がない。
「大学は卒業式を残すだけでよかったですね」
「はい」
卒業してなかったら、大学にまでついてくるつもりだったのかと思いながらうなずいた。
「今日は朱加里様が退屈されているだろうと壱都様がおっしゃられていましたので、いろいろとご用意させていただきました」
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