vol.1

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会社を辞める前に、もういいか思って、俺は会社の人に瑞穂さんが好きだと少しづつ打ち明けた。あとは勝手に噂がまわってくれるだろう。 瑞穂さんがそそのかしたんじゃなくて、俺が心底惚れ込んだんだってこと。 ──── 「横浜くんってさ、すっごい可愛いのに女の趣味悪いよね」 「でも、仕事は出来るじゃん。須藤主任」 「そうそう。仕事面では尊敬出来るよ」 「ええ、でも女としては全然じゃん。自分が可愛いから相手に求めないのかな? それともお金発生してんの?」 噂がまわったのか、陰口が聞こえて来た。というか、瑞穂さんのことが気に入らない奴が一人いるだけか。瑞穂さんが仕事も男も手に入れるのが気に入らないのだろうか。俺は何て言われようと全然気にならない。あんなの、雑音だ。 「横浜くんもさ、今は可愛いけど、あのテの顔は老けたら悲惨よね。30超えたら気持ち悪くなりそ」 「いや、ちょっと言い過ぎじゃない」 悲惨……。大した接点もないし、ただ思った事を口にしただけだろう。軽い文句程度の会話のつもり。向こうにとってはそのくらいのこと。明日には忘れてる。些細な悪意は自覚なく、それでいて恐ろしいものだ。 瑞穂さん、気にしなきゃいいけど。あの人、俺のことは気にするからなぁ。 ──── 「ちょ、ちょっと、ちょっと! 横浜くん辞めるの? 仕事。え!? 何で!? ええええ!?」 会うなり興奮気味の瑞穂さんを一度落ち着かせ 「うん。だから、よろしくね」 と、笑った。
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