🎄貴方の為に🎄

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「堂上さんもですが 葉山も変わりましたね。 あんなに自信なさげで悩んでばかりだったのに・・ あの頃が嘘のようです。」 「そうだな。今はやりたい事がやりたいように 出来ているんだろう。周りの理解もあるしな。」 「それもありますが・・。」 征也はそこまで言って口を噤む。 「ん? なんだ。」 「あ・・いえ。」 躊躇し それでも思い直したのか言葉を繋げた。 「堂上さんから吸収した全てがアイツに自信を 与えているような気がします。 考え方から言動まで。いつでもアイツの隣に 堂上さんが居るような・・そんな錯覚までする くらいで。俺が今回志願したのもそれが理由です。 さっき無駄だとは言われましたが やっぱり・・俺も堂上さんを目指してますから。」 そう言うとまた深々頭を下げる。 「なので。頑張ります。今日はすいませんでした。 ああ・・俺。そこで降ります。止めて下さい。」 「あ? いや送ってやるぞ。」 「いえ。早く帰ってやって下さい。 大丈夫です。タクシー拾いますから。」 仕方なく 車を止めると征也はそそくさと シートベルトを外し ドアを開けた。 「明日の朝。鑑識には俺が報告しますんで ゆっくりして下さい。上にもそう言っておきます。 お疲れ様でした。」 一方的にそう言うとバタンとドアを閉める。 征也は走り去る車に向かって また深々と 頭を下げると ぎゅっと拳を握り 車が見えなくなる まで じっとその場に立ち尽くした。
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