観測者

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 自分自身をこの時代に連れて来る不思議な能力を持つふたり。その能力を以てすれば、同じように未来から過去に自分たちを送る事も可能な筈。西森とふたりで、敗戦に至る戦争史を熟知し失敗だらけの作戦を全て成功に導き、あの戦争に勝つ。そう思っていたのだか……  まさか、近代兵器の技術が結集したイージス艦ごと大東亜戦争に持ち込もうと言うのか。そんな事が可能なら……横井は高揚を隠せない。  亜樹はゆっくりと身を翻し、イージス艦に背中を向けた。人差し指を顎に当て少し困ったポーズを見せるものの、表情は何ら変わらない、いつもの冷たい視線のままだった。 「そうねぇ……さすがにチョット大き過ぎるかしら?」 「大きい?」  イージス艦そのものの大きさの事だろうか?  物の大小で時空を超える事が可能だったり、逆に無理だったりするのか?  そんな横井の勝手な思案を見透かしたように、亜樹が話始めた。 「世界線を超えて、人間を時空転移させる事くらいまでなら容易いわ。現に貴方はそうやって、此処の世界に来たんですもの。勿論、その逆も然りよ」  知樹がそれに続く。 「でも君が、作戦失敗の連続であった大東亜戦争史を頭に詰め込んで、もう一度あの時代に戻り作戦を訂正したところで勝てるの? アメリカとは物量的に彼我戦力の差があり過ぎるもんね? それは、君も心の何処かで気付いてる筈。あの戦争に勝つ為には、圧倒的にねじ伏せる力が必要不可欠なんだよ」
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