小鉄がいうので

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 本当に大丈夫かな。  ぼくは体を震わせながら草木に隠れていた。  深夜。風が雲を動かし、三日月を隠す。  作戦が始まる前、不安がるぼくに父の弟子である兄弟がいった。 「案ずるな。ナリタよ。お前は実の父親が信用できぬのか」  心頭滅却すれば火もまた涼しが信条の兄カセがいう。他人に厳しく自分にはもっと厳しい。 「そうだよ。ナリタ。先生はこの辺りじゃ一番の退魔師」  弟のカチがいう。兄よりもやさしい。ぼくは彼の方が好きだった。  二人は父の弟子であり助手だった。  父と三人でいったい幾多の魔物を倒して来たのだろう。とても頼もしい存在だ。 でも今日は二人の言葉さえ不安だ。  だってぼくははじめてなんだから。  ぼくは今年で十二歳になった。退魔師の子は退魔師になる。幼いころより修行をして、十二歳を迎えると退魔に参加することが許される。  今夜がその日なんだ。
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