0人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
本当に大丈夫かな。
ぼくは体を震わせながら草木に隠れていた。
深夜。風が雲を動かし、三日月を隠す。
作戦が始まる前、不安がるぼくに父の弟子である兄弟がいった。
「案ずるな。ナリタよ。お前は実の父親が信用できぬのか」
心頭滅却すれば火もまた涼しが信条の兄カセがいう。他人に厳しく自分にはもっと厳しい。
「そうだよ。ナリタ。先生はこの辺りじゃ一番の退魔師」
弟のカチがいう。兄よりもやさしい。ぼくは彼の方が好きだった。
二人は父の弟子であり助手だった。
父と三人でいったい幾多の魔物を倒して来たのだろう。とても頼もしい存在だ。
でも今日は二人の言葉さえ不安だ。
だってぼくははじめてなんだから。
ぼくは今年で十二歳になった。退魔師の子は退魔師になる。幼いころより修行をして、十二歳を迎えると退魔に参加することが許される。
今夜がその日なんだ。
最初のコメントを投稿しよう!