ようこそ異世界

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ようこそ異世界

 対向車線からトラックが飛び出してきた。  特に恐怖を感じることも無く、死んだなと。  思えば理不尽だった。最大のパフォーマンスを仕事で発揮したいから、定時のちょっと過ぎに帰っても怒られる。ずっと一緒にやっていた女性のゲーマーは、俺だけを残して皆ネットで彼氏を作る。  皆が彼女が出来ているのに俺だけ出来ないって可笑しくないか!? お蔭で29歳なのに童貞だわ。もうちょっとで魔法使いなれるわ。だから俺は女性関係はほぼ諦めていた。  けれども、ネットの人間を見ていたらよくあるやつだ。俺の方がマシな男じゃね? って淡い期待を抱くわけさ。だから、動画や本を見て価値観を深めたり、毛を剃るのが面倒だから脱毛したりとまあ色々したよ。他にもなんだ眼鏡だったけど、ICLの手術を受けて目の矯正した。  めちゃくちゃお金かけてるじゃん? って。コンタクトを付ける時間、髭を剃る時間があまりも無駄だから、この大きな決断を行ったわけだ。うん。世の中はいかにも時間を効率的に使って生産性を高めるかなのだ。  だが、そうやって新たな一歩を踏み出そうとしたのにあまりにも不遇じゃないか?  なんだよ。社用車で高速道路走っていたら、トラックが対向車線から飛び出してくるって。  あ、ヤバい――体がどんどん冷たくなっていく。祖父と祖母が亡くなったときも同じだった。凍るように冷たい。さっきから試しているが、指先すら動かない。そうかこれが死か――。  想像したものを具現化できたら、もっと生産性があがるのにな。あと、女の子でも作って童貞捨てたい。いや。それは流石に生の女の子がいいか。我ながら少しサイコ臭して怖いこと言ったな――。
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