運命の出会い

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運命の出会い

ステージ中央にいるのは、甘い戯言とは知らずに、遥々異世界を渡ってきた者たち。騒がしくはないが挙動不審で、身に置かれた状況に思考が追いついていない感じがした。 【キャンプ地で一週間、生活すると100万円進呈します。 試練と選択の一週間を過ごして貰います。見知らぬ土地で課せられたルールに従い、キャンプ地で生活をします。 ・持ち込む道具や食料品や嗜好品は自由。 ・SNS等へ写真掲載や動画配信は機密事項の漏洩防止のため厳禁。 ・現地調達不可。】 このような曖昧かつ詳細不明な説明で、出願者が集まるのか不可解だが、夢見がちなニンゲンにとって、現実逃避こそが格好のエサなのだろう。 あまりにも脱落者が多く、求めるニンゲンが来ない現実に、失望の念を抱いていた。 此処は【Alive(アライブ)】。 獣が人に変幻する妖者(あやかしもの)か、人が獣に変幻する神獣(しんじゅう)か、いずれかの種族が共存する世界。 変幻しない獣は魔獣(まじゅう)と呼ばれ、変幻しない人はニンゲンと呼ばれる。 存在する比率は、妖者9に対して神獣1と謂われている。神獣は高魔力保持者が多く、変幻自在だ。 相反する存在は魔獣。自我はなく微量ながら魔力があり、体内で魔石に凝縮されている。活動時間の夜に徘徊する習性があるが、魔石欲しさに乱獲が激しく、今では狩が制限されている。 平和な世界“Alive”に、何故ニンゲンを呼び寄せるのか。。 妖者や神獣は互いに交わり繁殖するが子を宿しにくい。要は伴侶候補として、ニンゲンが連れて来られる。此方側に足を踏み入れた者は、二度と故郷に戻れない事実を知らされていない。 脱落者とは妖者の手に堕ちたニンゲン。奴隷のように下僕のように手足となりこき使われるか、精気を吸われ死に瀕するか。 選択は妖者側にあり、ニンゲンは従うのみ。 ニンゲンが現実逃避したくてAliveに来るように、Aliveの住人も守護者となり伴侶と巡り逢えるかもしれないという夢を抱いて受け入れているのだ。 俺は灰色の風遣いシヴァ。同族と異なる瞳の色をしている高魔力保持者で、住人に周知されている。 今回も妖者が暴走しないよう、目を光らせている役割だった。 ステージ上に話を戻そう。ニンゲンがひとりずつ名を呼ばれるまで、観客席にいる全員が、品定めならぬ伴侶候補選びに吟味する時間であり、繰り返し行われているこの時間が興奮のピークだろうと、傍観していた。
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